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デジタル・フィルムメイキング ─新しいプロフェッショナルとは何か


『デジタル・フィルムメイキング ─新しいプロフェッショナルとは何か』
マイク・フィギス 著/栗田 豊通/藤幡 正樹/桂 英史/村上 華子
2010年 フィルムアート社

もう、黙っていられないくらい素晴らしい本です!

『カルフ映画文庫』文句なしに認定です。

結論から言います。

1、2本映画を自分で作ったことがあって、
もっといろいろ知りたいな、レベルアップしたいな、という感じの人は、
迷わずこの本を買ってください。

共感できる部分が満載で、そして著者のアドバイスで
具体的にレベルアップできます。

借りるんじゃなく、買ってください。
線を引いておくべきことがすごく多いからです。

僕はページの右上を折り曲げていたら、ほとんどのページが対象になってしまいました。

何が素晴らしいか。
それは、映画作りのきれいごとだけを並べて「いない」からです。

読みながら何度も、「そうそう」と苦笑いするような本です。

僕は映画本をかなり読んでいる方だと自負していますが、
僕の言いたいことがほとんど書かれておらず、
日頃から不満に思っていました。

そのため、そのうち自分で本を出そうと息巻いていましたが、
この本を読んで、2割くらい気持ちが落ち着きました。
(残り8割は、やはり僕が書かねばならぬと思ってます。笑)

著者の映画監督マイク・フィギスは、
『リービング・ラスベガス』でアカデミー賞にノミネートされています。

デジタルでの映画作りに早くから興味を持ち、SONY のカメラを喜んで使い倒しています。
一眼レフでの映画撮影用の機材を探している時に見つけた、
フィグ・リグという車のハンドルのような機材は、マイク・フィギスの発明だそうでびっくり。

彼は、
「自分の想像する映像を作るために既成の機材をどんどんカスタマイズする」
と書いています。

それはそうかもしれない。

その他、気に入ったところをいくつかピックアップします。
※文字通り書き写すのではなく、少し僕の言葉で書き換えています。

●撮影教育には、カメラと多くの時間を過ごすことが一番。
自分のカメラは、どうすればどんな風に撮れるのかを身体で覚えるべき。

●撮影時は、液晶の小さな画面を見る時、
その先の、大きなスクリーンで上映する時のことを想定して確認しろ。

●映画は、いろんな人を励ましたり、やる気にさせて、
自分の思い描くビジョンを共有できるようにしないと完成しない。
コピーしたり、お茶を配ったり、そういったことも、誰かがやらないといけない。

●日頃からロケ地の候補となる場所を見つけるようにして過ごすこと。
→これ、そのうちメルマガで書こうと思っていた・・

●10人くらいの所帯でも、移動がすごく大変だ。
映画で一番悩ましいのは、人が多くなってしまうことと、荷物が多くなってしまうこと。
→こういうこと、映画作りの本に書いていないのだ。ほんと。

●監督の仕事は、スタッフ全員を引っ張っていくことだ。
アーティストになりきって仕事だけすればいいんじゃない。
自分でできなければ、代わりをやってくれる優秀な助監督を見つけないといけない。
→カルフはこれを助監督に任せてます。

●ビデオは、「フィルムじゃない」。
従来の照明技術というのは、「フィルム向け」に発達してきた。
ビデオカメラは、暗い環境でも感度よく撮影できる。
だから、何でもかんでも照らすようなやり方は変えるべきだ。
→もっとも感銘を受けた個所です。

・・・なんか、長くなりそうなので止めます。
これだけ書いても、ページを折った3分の1くらいです。

映画を作ったことが無く、でもすごい作品が作れる自信のある人、
つまり、

経験<<知識

この公式が当てはまる人は、この本はNGでしょう。
多分、この本を批判すると思います。

でも、実際に作っていて、理想と現実を知っている、
つまり、

経験>>知識

という人にはまさに最適な本です。

理想はもちろん、

経験≒知識

ですけどね。

アウトプット≒インプット

と置き換えることもできます。

最後に、本の帯にもついている言葉を書き写します。
これ、ほんと金言です。

『映画を“撮らない”理由を作るな』

いやあ、いい本に出会った。

演劇は仕事になるのか?

『演劇は仕事になるのか?』
米屋尚子 著
2011年 彩流社

タイトルから感じる内容とは、ちょっと違うかもしれません。
まじめに演劇界を考察した本です。

特徴的なのは、文化的施設だけでなく、
一般の趣味の演劇団体にまですそ野を広げていること。

内容が、自主映画にも当てはまるなあということで紹介しました。

著者は、ビジネスモデルよりも、
集団運営、劇場管理といった組織体制について多くまとめています。

(作品を作るという)芸術の才能の上に、
集団の運営という才能も一緒に要求するような仕組みは、
不必要にハードルを高くしている、と。

これは同感。

きらめく映像ビジネス!

『きらめく映像ビジネス!』
純丘 曜彰 著
2004年 集英社

映像業界の裏側をあらゆる角度から紹介している本です。

映画を作りたいと思っている人の中には、
プロや業界に憧れている人も多いはず。

実際にその業界に進む決意をするのもいいのですが、
こんな本でいっぱい情報を得て、
可能ならアルバイトなどをするのもいいのでは、
と僕はいつも話しています。

業界に憧れる人も、業界の中にいる人も、
業界を止めた人も、いろいろ知り合いにいます。

業界に進むことが、いい・悪い、ではなく、
向き・不向きはあるだろうな、と思っています。

映像制作D.I.Y.

『映像制作D.I.Y.』
古屋 蔵人 編集
2011年 ビー・エヌ・エヌ新社

珍しく新刊のご紹介です。
今、書店に平積みにされていることでしょう。

魅力的なタイトルです。
いろんな作品の制作過程も、写真でコマ割りして丁寧に紹介しています。
改めて思ったのだけど、ものづくりとは、道具を使うこと。
素敵な道具に囲まれた空間は、想像力を刺激する。

注意点は、この本はアニメーションなどの特殊な映像向けであり、
一般的なドラマ映画制作とは違う、ということ。

まずは本を手にとってみて、紹介されている作品が目的に合う場合は、
とても参考になる本です。
僕も昔は紙芝居アニメなども作っていたので、
当時であればむさぼるように読んだであろう本です。

ハリウッド大作映画の作り方

『ハリウッド大作映画の作り方』
ハイパープレス 編
2001年 光文社

ハリウッド映画が作られていく過程を、
企画から上映・配給まで、
そしてプロデューサーから宣伝・エキストラまで、
じっくり紹介していきます。

映画制作についてよく知っている人にとっては、
びっくりするようなネタは揃ってないかもしれませんが、
頭の整理にはぴったりです。

もちろん、知らない人にとっては参考になる一冊です。

アカデミー賞を買った男—夢を追いかけて映画バイヤーになった

『アカデミー賞を買った男—夢を追いかけて映画バイヤーになった』
梅原 健 著
2005年 B!インターナショナルブックス

数々のアカデミー賞作品を買ってきた映画バイヤーの、映画の選び方と彼の半生記。
とは言え、映画の選択眼の部分が面白く、自分の生活の部分はさらっと流します。

プロデューサー、監督、役者、シナリオなどそれぞれに理由を付け、
その合計で金額を決めていくところなどはとても興味深い限り。
一つの作品を買い付ける流れを、
実施のメールなどのやり取りを再現しながら説明する部分は生々しく感じました。

自分が作りたい作品をふと、振り返って評価してみる機会になるかもしれません。

人を惹きつける技術

『人を惹きつける技術』
小池 一夫 著
2010年 講談社

子連れ狼の原作者、小池一夫によるキャラクター作りの本です。
軽い本だと思って読み始めたものの、これが面白い。

「キャラが起つ」という言葉を作ったのは彼なのだそうです。

「主人公には弱点を、ライバルには欠点をつけろ」や、
キャラを引き立てる三原則など。
シナリオの書き方の本棚に並べることにしました。

しかしタイトルがもったいない。
自己啓発書っぽい。
もっとストーリーを作る人向けのタイトルにすべきだと思います。

パワー・オブ・フィルム 名画の法則

『パワー・オブ・フィルム 名画の法則』
ハワード・スーバー 著/ 森マサフミ, 長土居政史 訳
2010年 キネマ旬報社

UCLAフィルムスクールで長年講義をしている著者による、映画の法則論をまとめたものです。
特徴的なのは、Aから順番にWまでの単語をタイトルにしたビジネス書調であること。
好きなもの、気に入ったものをいくつか紹介します。

[キャラクターの人間関係]キャラクターは、自己紹介ではなく周りの人の関係性において描かれるもの。
[ジャンル]ジャンルは、観る人の層を決めてしまう。名作になるには、そのジャンルを超越したものを取り入れるべき。
[ヒロイン]ヒーローはヒロインがいることでヒーローになれる。しかしヒロインは単体ではドラマにはなりにくい。男を追い払うしかないのだ。
[ジャーニー]旅がドラマを作るのではない。物理的な距離ではなく、主人公の成長こそがドラマなのだ。
[オリジナリティー]まったく新しいものを創出することは不可能に近い。大事なのはオリジナリティーではなく、クリエイティビティー(工夫)だ。
[ペルソナ]個性と役柄がピッタリ合う役者を探すといい。ドラマの中でその性格について説明する手間が省ける。だから、個性のある俳優は高額なのだ。
[ピテイ]ヒーローが傷を負っても、観客は哀れみはしない。観客が求めるのは、共感、だ。
[プロット]新しいプロットを思いついた、という人は往々にして、演劇や文学の歴史を知らない。

メイキング・オブ・ピクサー—創造力をつくった人々

『メイキング・オブ・ピクサー—創造力をつくった人々』
デイヴィッド A.プライス 著/櫻井 祐子 訳
2009年 早川書房

僕の敬愛するクリエイティブ組織「ピクサー」ができあがっていく歴史を
かなり詳しくまとめた本です。
読み応えがあります。

ピクサー解説本を読むのは3冊目。
この中で、一番分厚く、ピクサーの歴史に焦点が当てられています。

組織論は特に書かれておらず、比較的淡々と、社史のような形でつづっていく。

ピクサーという理想的な環境も、できあがるまでに相当な回り道をしてきたのだとため息。

そして、これだけの不遇な状況で、多くの人が夢を捨てずにまとまっているのは、
やはりすごいことだと思うのです。

マイ・ムービー・ビジネス

『マイ・ムービー・ビジネス』
ジョン・アーヴィング 著
2000年 扶桑社

『サイダー・ハウス・ルール』の著者ジョン・アーヴィングによる、映画の制作ものがたり。
映画の舞台裏を、原作者・脚本家がつづっていく、というのは珍しいです。

この映画、映画化まで10数年もの年月がかかっていて、その間監督が3回も変わったという。
その各監督とのやりとりも面白い。
腕のある監督だからいい、というものでもないみたい。

原作者と脚本家が同じ場合、映画用に物語を短くしなければならない。
でもそれは、シーンを削るということ、登場人物を削るということ。

その辛さをつづっているのが印象に残りました。