カテゴリー別アーカイブ: 監督・役者

トラッシュバスケット・シアター

『トラッシュバスケット・シアター』
岩井俊二 著
2001年 角川文庫

映画監督による、映画にまつわるエッセイ集です。
有名な代表作の舞台裏や、彼の幼少期の話、業界の日常など、
映画制作に興味ある人には興味深い内容になっています。

小津安二郎作品の分析も面白い。
カットバックやアップのこだわりについて、自身の考えを
つづっていきますが、ここの詳細は実際に本を読んでもらいたいです。
非常に学びがあった本でした。

監督自身が描く、挿入イラストもいい味出してます。

311を撮る

『311を撮る』
森達也/綿井健陽/松林要樹/安岡卓治 著
2012年 岩波書店

森達也など映像作家4人が、東日本大震災の被災地でロケをした
ドキュメンタリー映画の舞台裏をそれぞれ語る本です。
4人それぞれ、自分の想いを持って被災地へ向かっている様子が読めます。

この本は、映像制作の本だけど技術論などは一切出てきません。
自分が撮りたいものは何なのか、なぜ撮るのか。
ひたすら自問し続ける作家もいれば、本能の赴くままにカメラを向ける作家もいる。
作品も(見ていないのだけど)、賛否両論どころか、絶賛と罵倒だったと言います。

被災地でも当然、彼らは歓迎されない。
ガレキを投げつけられ、それでも撮らなきゃいけないんだ、と叫び返す。

読みながら、16年ほど前にサラエボで、銃弾で穴だらけになった廃屋を見て、
カメラをカバンにしまった自分がいたのを思い出しました。
ドキュメンタリーというのは特殊な撮影だと思うのです。
僕は、役者にはカメラを向けられるけれど、一般人には無理だ、と思いました。

メイキング・オブ・ブレードランナー

『メイキング・オブ・ブレードランナー』
ポール・M・サモン 著/品川四郎・石川裕人 監訳
2007年 ヴィレッジブックス

言わずと知れた有名映画『ブレードランナー』について、
制作の過程で張り付いた著者が、微に入り際に入り解説する本。

とにかく分厚い本で、よほど好きなマニア向きとも言えます。
ただ、リドリー・スコットの映画術、とも言える内容になっていて、
学ぶところの多い本でもあります。

監督が採用している「ピクトリアル・リファレンス」
も参考になるし、シナリオを何度も書きなおしていく過程、
原作者との闘争、評判との戦い方、俳優陣との確執など、
ハリウッド流のヒリヒリ感も味わえるのも貴重です。
と言うのも、こういったことは多かれ少なかれ、
自主映画の現場でも起こることだからです。

リドリー・スコットが完璧主義者すぎて、
撮影現場は、かなり険悪な状況だったみたいですね。

アメリカ映画風雲録

『アメリカ映画風雲録』
芝山幹郎 著
2008年 朝日新聞出版

有名なアメリカ映画の、舞台裏の監督たちの様子を活写していく本です。
『ミリオンダラー・ベイビー』を撮影しているイーストウッド、
『ロリータ』を撮影しているキューブリック、
『ゴッドファーザー』を撮影しているコッポラ、
『キル・ビル』を撮影しているタランティーノ・・・。
監督たちのわがままぶり、映画への情熱、プロデューサーとの確執。
監督とはさもありなん、という様子が伝わってきます。
映画とはつまり、監督そのものだということも。

それにしても、『ゴッドファーザー』を監督した時のコッポラが
33歳だったというのには愕然としました。

黒澤明の作劇術

『黒澤明の作劇術』
古山 敏幸 著
2008年 フィルムアート社

黒澤明について、また彼の一連の作品についての本は山のようにありますが、
たいていそれらは、黒澤明を崇めたてまつる内容になっています。
しかしこの本は、良くも悪くも冷めた目で黒澤明の映画についてつづっています。

何しろ、『私が見た黒澤明は、怖い人でも強い人でもなく、
青二才の批判にもむきになって反論しようと試みて傷つく
繊細で痛々しい老人だった』と言い切るのです。

著者は脚本を書くため、黒澤作品の脚本とそのアプローチについてまとめています。
黒澤明は脚本共作システム、つまり脚本の共同執筆というのをとっていて、
そうすることで、客観性=「複眼」が得られる。
一人で書くより複数で書いた方が、どこから突かれてもビクともしない脚本ができあがる、
といった内容です。
これは確かに、参考になります。
しかし同時に、共同執筆者との連携の難しさについても触れているわけで、
ここでもコミュニケーションにかかるわけだな、と思いました。

黒沢清の映画術

『黒沢清の映画術』
黒沢清 著
2006年 新潮社

自主映画から始めて、日本を代表する映画監督になった著者の、
インタビュー対談集です。
タイトルは知識所のようですが、全編会話で貫かれてます。
なので、教科書的な本と言うよりは、
インタビューの中からニュアンスを感じ取る本だと言えるでしょう。

気になったか所をいくつか。

「商業映画は、観客が喜ぶものを作らないといけない。
 でも、通俗に徹するのは嫌だ」
「伊丹十三さんの映画は、1シーンが終わるたびに、句読点のような絵を入れる。」
など。

ためにならない映画の教科書

『ためにならない映画の教科書』
石井克人 著
2004年 MARBLE BOOKS

石井克人監督の映画本です。

前半は映画のあれこれについてのインタビューエッセイが続き、
後半は、映画『茶の味』のプロダクションノート的なものを公開しています。
前半では、監督がどうやってデビューしていくかという過程も語っていて参考になるかも。
個人的には、やはり後半が好きですね。

絵コンテ以前の企画段階のノートを掲載し、思いついたアイデアのメモなんかも説明。
石井監督の頭の中、考え方のメモの仕方などがよく分かるのです。

映画の授業

『映画の授業』
黒沢清ほか 著
2004年 青土社

脚本・演出・撮影・録音・編集。
映画美学校のそれぞれの授業を文字で再現した本です。
プロになりたいわけじゃない人が読むと、
ちょっと小難しい部分もあるかもしれません。

編集はやはり、実際に動くものを見ながらの方が学習しやすいかな、
と思いました。
一方、録音の話はかなり身につまされるものがあり、面白かった。

「普通の会社員をこなせる人なら映画を作れるし、
 逆にきちんと映画を作れる人は会社員もこなせる。」
これは、完全に同意見です。

マイ・ファースト・ムービー

『マイ・ファースト・ムービー』
スティーヴン・ローウェンスタイン 編
宮本高晴 訳
2002年 フィルムアート社

どうやって最初の映画を作ったのか、を16人の監督にインタビューした本です。
読んでいて、ひっかかった言葉をピックアップします。

「監督していると、自分の弱点と向き合わされてばかりいる」
「実際にやりとげる人と、口先だけの人を隔てるものは、
才能のあるなしとか運不運といったことだけではない。」
「多くの監督にとって処女作は、技術的に未熟であることは認め、
処女作は他人と違うことを気づいてもらうことを意味する。」
「いいムードを保っていれば、突発事故にも対処できる。
ドラマはカメラの向こうにあるもので、こちら側にはない。」

総じて、皆、資金調達に力を入れています。
全部の監督の共通点はそれだけで、
あとのやり方、考え方ははほんとうにバラバラ。
みんな、全然別の苦労をしていて、映画の知識などの部分はあまり触れていません。
知らないなら何となく思うようにやるし、もしくはカメラマンに任せてしまう。

また、題材として自伝的要素を入れる人が多いのも特徴的でした。

ヒッチコック『裏窓』ミステリの映画学

『ヒッチコック『裏窓』ミステリの映画学』
加藤 幹郎 著
2005年 みすず書房

「事件は無事解決、映画は大団円へ。
いや、男は本当に妻を殺害したのでしょうか?」

刺激的なコピー文に釣られて読みました。
『裏窓』という作品を分析し、
その裏に隠されたヒッチコックのメッセージや意図を読み取って行きます。

指摘は、ハッとさせられるもの。
シンプルなミステリと見ていた『裏窓』が、
実は主人公の結婚観、そして人生観から生み出された
“空想”“幻想”ではないかと分析します。

この著者の分析が正しいのかどうか、というのは
正直どうでもいいでしょう。

名作というのは、ここまで奥深いものになりえるということに
改めて感銘を受けることになりました。
翻って、
自分の作る作品は、果たしてどのくらいの奥行きがあるのか。

こういった本を読みながら、一度考えてみるのもいいでしょう。