映画を撮りながら考えたこと

『映画を撮りながら考えたこと』
是枝裕和 著
2016年 ミシマ社

『誰も知らない』『そして父になる』『万引き家族』など、今は日本を代表する監督と言っていい著者が、自分の作品について、また映画について語る本です。

個人的には、1999年に『ワンダフルライフ』を見て強く印象に残っていました。
当時は何も考えずに見ていましたが、テレビドキュメンタリー出身というのが強く出ていた作品だったのだと、本書を読んで分かります。

社会のこと、事件のこと、宗教のこと、政治のこと、家族のこと・・。いろんな問題について考えを巡らせながら、そこで考えたことを元に映画を作っていく。そんなスタイルの監督のようです。

本書は、「カメラの使い方」とか「編集テクニック」などとは真逆の内容。

映画の作り方というより、著者の思考とその変遷、そして表現についてページが割かれています。ほとんどが「思考」の本。まあタイトル通りなんですけどね。

だからこそ、普通の映画本では味わえない、じっくりと著者の思考を追いかけることができます。

冒頭、「絵コンテに縛られていた」と告白から始まります。絵コンテをしっかり描くことで、撮影当日はそれを追いかけることになってしまった、と。「撮って、編集して、考えて、また撮る」というドキュメンタリーの制作のあり方に魅了されている、とも書いています。

とはいえ、カメラの位置とマイクの位置、光の使い方など、制作に参考になりそうな部分も散見されます。

・シナリオを渡さず、口伝えで演出する方法も使い分ける
・音の「大小」ではなく「遠近」にもこだわり、音の距離感と拡散の違いを加える
・監督助手というポジションを加える撮影法
・感情は説明をしない。説明してしまうと、それを表現しなくちゃいけないと思ってしまう役者が往々にしている。「悲しい」と言えば、台詞に悲しみを込めようとする。それを避けたい。

その他、海外の映画祭でのエピソードや、映画以外のことの教養を身につけることなども触れています。海外の映画監督はある程度の特権階級やエリートが多いが、日本の映画界は自主映画出身者ばかりだと。

最後の「これから撮る人たちへ」では、お金について触れています。プロの監督になるということは、予算についても考えないといけないということですね。

本の分厚さだけでなく、内容的にもボリュームのある本です。