『日本映画のサウンドデザイン』
紅谷 愃一 著/小島 一彦 監修
2011年 誠文堂新光社
とにかく、現場現場で異なる問題に悩まされる様子が伝わって来ます。
プロの世界にだって、録音にシンプルな答えなどないということが分かる一冊。
カエルの大合唱、セミの大群、海外のまちの騒音・・・。
風が強ければマイクに風防をつけ、録音マンもジャケットを着込む。
塵が舞えばマイクに防塵をつけ、録音マンもゴーグルとマスクをつける。
『羅生門』のアフレコでは、室内収録はおかしいから屋外でやることになったり。
「サウンド・オンリー」とは、本番が終わった後に、録音に不都合があったために、すぐに同じ演技をして音だけを収録すること。これは自主映画でもよくやりますね。
本書から自主映画でも役立つノウハウを取り出すなら、「カメラのフレーム外ギリギリまでマイクを役者に寄せ、可能な限り明瞭な声を同時録音しようと努力する」。この言葉に尽きるんじゃないかと思います。
著者の60年に渡る映画制作の経験をまとめており、
昭和の映画史を記した本にもなっていると思います。