『脚本家-ドラマを書くという仕事-』
中園健司 著
2006年 西日本新聞社
プロの脚本家による指南本。
やや古い本のため情報には注意が必要ですが、とっても濃い内容だと思いました。
いくつか抜粋すると・・
・向田邦子は脚本家の条件として「胃が丈夫であること」と言っている。
・原作があるシナリオでも、できる限り取材をするようにしている。舞台となる現地に足を運ぶ、人に会って話を聞く。
・橋本忍の言葉「大体君は上手く書こうと思うから行き詰まってしまうんだ。うまく書こうと思うな。上手に書こうと思うな。途中で行き詰まるということは、書きながら自分の書いているものを、ああでもないこうでもないと強く批判しすぎたからだ。」
・映画とドラマは、観る側の環境の違いがあり、それを意識して書く必要があります。
テレビドラマを集中してじっくり観ている視聴者を想定するのはかなり難しい時代になっています。そういう視聴者を、まずいきなり惹きつける出だし、そして飽きさせない展開が必要。
映画の場合は、とりあえずじっくり観てくれるが、散漫なシーンとかセリフは極力避けるべきで、凝縮したシーン展開、見ごたえのある伏線などが必要でしょう。・生計が成り立っている脚本家のほとんどは、テレビドラマを書いているということです。
・コンクールは誰にも干渉されず好きなものを自分のペースで書ける。プロになったら、そんな恵まれた環境でシナリオを書けることはまずない。
・小説の学校というのはあまり聞かないが、なぜシナリオの学校は多いのか。それは、シナリオは小説ほど「自由」ではなく、共同作業における「客観性」と「基礎的な技術」が必要とされるということでしょう。自分で書いたシナリオを自分で客観視するのはとても難しいことです。
プロデューサーなど関わる人たちの仕事内容についても触れてます。シナリオや企画が、彼らと一緒に作る、彼らからの制約を受けるため、知っておかないといけないのでしょう。
著者自身のこれまでものがたりがあったり、著者のシナリオがまるまる掲載されていて参考になります。
「脚本の依頼はどこから来るのですか?」「2時間ドラマを書くのにどのくらいかかりますか?」など、脚本家への質問のコーナーも面白い。
シナリオスクールやコンクールの情報も巻末にまとめられていて、シナリオライターを目指すなら読んで損はない一冊だと思います。