『まんがでわかる まんがの描き方』
浅野龍哉・砂威・大塚英志
2024年 角川書店
今年から開学するオンライン大学のZEN大学で、
『マンガ絵コンテから学ぶ視覚表現』
という授業が始まるそうで、
その授業を担当する先生が書いた本とのこと。
いいなと思った部分をピックアップします。
・シナリオ、または原作を元に、
文字のどこからどこまでを1コマに入れていくかを考えて線を引く。
これで字コンテになります。
字コンテの時点で、コマ数やテンポが見えてくるのでおすすめです。
次に、その一コマを、カメラアングルとブロッキングサイズ(フレーム内に人物のどの部分を切り取るか)の2種類を使って描くと絵コンテが出来上がります。
・コマの中を読者は、右から左に読むので、
最初に読ませたいセリフと見せたいキャラクターを
右手前に置く。
最後に見せたいキャラクターたちをコマの奥に絵にする。
(オリカワ注釈)
映画の場合は、画面の中に順番に登場させたり、
カメラで順番に写したり、といった感じ。
・マンガではコマの大きさがカットの長さ
・まんがのコマは、変形するとはいえ、映画のフレームだ。
漫画家は、カメラを俳優や風景に向けるカメラマンでもあるわけだ。
・まんがの新人賞に応募すると、
「アップが多すぎて単調です」
みたいなコメントが返ってくることがあるけれど、
それは「ショット」のバリエーションが少ないからだ。
「バストショット」は会話などのスタンダードなコマ、
「アップショット」はセリフを言っている人物や表情に注目させるコマ、
「ビッグサイズアップショット」は感情を構成するパーツに注意を促す。
パーツに寄っていくほどショットサイズが大きくなり、感情表現が強くなる。
一番強い感情は・・・「シーナリー」だ。つまり人物がいないコマだ!
・風景はただの状況説明や場面転換にも使えるけれど、
心情表現にも使える。
・カメラアングルの基本は3つ。
「アイレベル+ウエストショット」標準的なコマ。人の目の高さだから自然なかんじ。
「ハイアングル+ロングショット」客観的な印象を与えるから状況説明に向いている。
「ローアングル」見る人を引き込んだり大きく見せたり威圧感を与える効果がある。
まあ、あくまで一般論だけどね。
・一つのコマの中を分割した上で、人や物を配置するといい。
一番わかりやすいのは画面を左右に2分割するパターン。
画面の左右どちらかの空間に絵を配置する。
すると、人物から空間に向けて視線に動きが出る。
(オリカワ注釈)
これは面白いですよ。
例えば、画面右側に抱き合うカップルがいて、
その左側にぽっかりと背後が写ってる構図。
このあと、その背後で何かが起こりそうですね。
・余白はキャラクターの気持ちを表す。
空間と人物のレイアウト・顔の向きによって
複雑な気持ちが表現できる。
→人物の後ろに余白があると、過去を引きずってたり。
・2コマの移動距離で力の強さを表現できます。
1コマ目が引きなら、2コマ目はアップにしてみましょう。
・全体の構成を作ってみて、全体を俯瞰してみるといいdせよう。
ページ全体の流れを可視化することで、「ここで読者をハラハラさせよう」というふうに、
物語全体のテンポをかんがえることができます。
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読んでて、漫画の本なのか、映像の本なのか、
頭が混乱しそうでした。
そのくらい、考え方が似ている部分があるんですね。
もちろん、違う部分もあるので注意も必要ですよ。
セリフの位置、とか、
ページをめくるのに合わせたページ構成とか、
心の中のセリフの表現とか。
実は、この本には、前作があります。
『まんがでわかる
縦スクロールまんがの描き方』
浅野龍哉・砂威・大塚英志
2022年 角川書店
当然、こちらも読みましたよ。
スマホで読む縦スクロール漫画は、
日本よりも中国や韓国で進んでいるようなんです。
ただこっちは全体的に、
映像制作には不向きな内容が多めかな、という印象でした。
指の動きに合わせて物語を進める、
スマホの縦型視聴に最適化した表現を解説しています。
ただ!
縦型ショート形式のドラマ作品も増えてきている昨今、
この考え方も危険だと自分に言い聞かせています。
僕ももはや、「古い時代」の映像制作者ですから。
引き続き、実践と共に研究は続けたいと思います。
『まんがでわかる まんがの描き方』
『まんがでわかる 縦スクロールまんがの描き方』