『きょうも映画作りはつづく』
行定勲 著 2017年 角川書店
『GO』『世界の中心で、愛をさけぶ』などで有名な、行定勲監督のエッセイ。
監督の日常や撮影に入る前、そして最中や後のことが伝わってきます。
スタッフに対しても。自分より経験豊富な相手、いろんな噂が聞こえてくる相手、そういった人たちとどう対峙していくのか。監督の心のうちがあちこちで語られる。映画が公開された後のコメントにショックを受ける様子も生々しい。
・俳優にとってただ歩くシーンが一番難しいという話がある。
何もせず歩く行為は、俳優によっては不安材料が多いのだろう。
・『GO』の撮影現場では、役者の様子を見ているだけでも十分楽しめた。
だから、この作品は役者のアップが多いと思う。
監督自身ではなく、監督に向けて発せられた言葉も多く登場する。
・深作欣二監督「走るシーンは22コマから20コマくらいにコマを落として撮れ。その方が速く見えるんだよ」
・先輩「俺がクビと言っていないのだから、お前は役に立っているんだよ」
「評価は他人がするんだ。自分で評価を決めるな」
「作品を発表したら、他人が好き勝手言うだろう。それに耐えられないとやっていけない」
・ヴィム・ヴェンダース「子役と一緒に仕事をする時はいつも直感に身を任せるべきだ。脚本家が思いつかないセリフを子供が考えだすことが時々あるからだ」
国内外の映画祭の印象にも触れている。
街の人との距離が近い映画祭、映画ファンが監督に批判も辞さない映画祭、つまらないと観客が席をすぐ立つ映画祭…。
僕がこの本を読みながらいいなと思ったのは、監督が自分の作品について思いを馳せながら、同時に自分の過去を思い出していた部分。
子供の頃、若い頃、それらのエピソードが、作品と一緒に頭をよぎる。
映画監督という答えのない職業を覗ける一冊です。

