映画の生まれる場所で

03監督・役者

『映画の生まれる場所で』
是枝裕和 著
2023年 文春文庫

是枝裕和監督についてはご存知の方も多いでしょう。

『誰も知らない』
『そして父になる』
『海街diary』
『万引き家族』

などなど、有名作・受賞作がたくさんある監督。

そんな是枝監督自身が、
フランスで外国人俳優、スタッフと共に、
『真実』という作品を撮り終えるまでをまとめた本です。

著名な監督が、どんなことを考えどう準備し、
一つの作品にどう向き合ったかを
追体験できるような内容になっていて、非常に面白い。

なにより僕が惹かれたのは、
監督の手による手書きメモや資料です。

画コンテ(*)もふんだんに登場します。

(*)監督は、絵コンテではなく、画コンテを呼んでます。
厳密な定義は置いといて、同じものだと考えて読んでさしつかえないでしょう。

 * * * *

僕がこの本から得たエッセンス、
感じたことをピックアップしてまとめてみたいと思います。

※多少短くまとめたりしています。

【監督のやり方】

・脚本から、6-8ページのシーンの構成表を作る。そこから、アングル、聡明設計に進む。

・スタッフによる本読みは日本でも必ずやる。
できるだけスタッフに集まってもらい、配役を決めて台本を頭からお尻まで読んでもらう。
音にして他人の声として聴くことはとても重要だし、スタッフに映画の世界観を共有してもらうためにも重要な行事。

・子どもキャストには、現場で初めてセリフを口伝えする。日本でも同じやり方。

【個人的メモ】

・トリュフォー監督は、モニターを見ずに、ただただ音を聞いてシーンをもう一度撮るかを決めていた。

・(監督と俳優で)言語が理解できなくても、何を目指すかを共有できればいけるはず。

・今回、家族の7日間のものがたりを、43日間の撮影日数で丁寧に追っていく。

・撮影書に、是枝組パーカーが配られる。背中に、キャスト・スタッフの名前入り。
現場の士気が高まり、雰囲気もぐっと和らぐ。

・「俺が監督なんだから俺の言うとおりにしろ」と、現場で監督が演出や言葉ではなく「立場」で役者やスタッフを屈服させるのは残念。

・フランスで悩んだのが、編集作業。編集点が難しい。
会話の途中、どこでカットしたら不自然でないのか、がわからない。

【日本と海外の違い】

・フランスではロケハン専門のスタッフがいて、撮影準備に限定された職種で、撮影時には現場には付かなかった。

・是枝監督は、助監督とは別に監督助手という存在を傍に置いて、撮影の進行とは別に自由に意見を言ってもらう。
フランスでの撮影ではこの必要性を理解されなかった。

・フランスの撮影現場では、原則1日8時間までと法律で決められている。
8時間×5日間で週40時間労働。土日は完全に休み。
これならシングルマザーも映画の仕事ができる。
スタッフ・キャストと共にする食事は基本1日1回、日替わりビュッフェスタイル。

・韓国の撮影現場も、働き方改革が徹底されている。
週52時間労働は厳守。撮影終わりから次の開始までは12時間は空ける。
毎週主休日が曜日で決まっていて、全ての仕事が不可。だから、スタッフは病院の予約など入れられる。
(10年ほど前は、韓国の撮影現場も日本同様、長時間労働は当たり前だった)

 * * * *

長くなっていますが、
個人的に面白いなと思ったことも少し追記します。

ある監督は「手持ち撮影は、演出を感じるから嫌い」と言い、別の監督は「手持ちの方が演出を感じない」と言うみたい。
答えなんてないんですね。

どんなスタッフを配置し、その人材をどう選ぶかというポイントも載っていて興味深いです。
一つ一つの挙動、考え方すべてが、監督という人間を表していると思うんですよね。

役者に対して、なんども直筆の手紙を書いていて、それも掲載されています。
言葉が違うからこそ、思ってることを文章にして共有しているのかと思いました。

絵コンテ(この本では画コンテ)を、最初に一気に描くのではなく、撮りながら修正を取り入れながら、撮る分だけを描く、というスタイルが面白い。

監督は「絵コンテに否定的」なんです。
こう書くと、絵コンテを描かない人みたいですが、ところがどっこい、監督はめちゃ描いてます。

では、何を描いて、何を描かないのか。
僕はその視点で監督の映画の作り方を参考にしています。

海外での撮影経験をこうして読めるのは素晴らしいなと思いました。

長く引用してしまいましたが、これでも本書の一部です。
監督による手書きの資料も満載。

よかったら手に取ってみてください。

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