『絵はすぐに上手くならない』
成冨ミヲリ 著
2015年 彩流社
デッサン教室も開催する著者が、「絵を描くこと」について総合的にまとめた本です。
著者曰く、「この本は技術書ではなく、トレーニングの本」。
僕も絵コンテを教えるという立場から、非常に興味深く読ませていただきました。
いいなと思った部分をいくつかピックアップしてみます。
・漫画家やアニメーターのような絵を描く職業の方の疑問と、
デザイナーや3DCGクリエイターのように絵を描くことそのものが目的でない人の疑問は大きく違う。
・10代以下の若者はエネルギーと時間で絵を習得するのに適しているが、大人になってからは他にスポーツや勉強などを習得した経験や性格の長所を生かして、自分に合う方法を上手く選び取る人が上達が早い。
・絵が手段である場合、トレーニングにおいてゴールの設定が容易です。
例えば絵コンテを描いてスタッフに指示をしたいと思えば、スタッフが理解できるレベルの画力があれば十分となります。
・作品制作はすぐに始めてください。勉強が終わってから作品を作ろうと思うと、一生作品制作に入れません。
自分でうまくなったと思う日など来ません。
・絵を描いてない人ほど、「センス」というものを気にするように思われる。さんすという言葉を使っている時点で、何か得体の知れないものにあこがれたり怖がったりしていると言える。
習得可能な8つの能力として次のものを挙げています。
「アイディア、オリジナリティ、形状ストック、構図構成力、形を取る力、立体を把握する力、テクニック、完成させる力」
また、タイプ別の解説、トレーニング法。
自己診断チャートも面白い分析法です。
ぞれぞれの著者なりの訓練法も解説されています。
職業別に、どんな能力が必要なのかまとめられているので、将来の仕事を探す人には役立つでしょう。
絵を描くという行為を、センスだとか才能だとかと放り投げてしまわず、できることから始めてみよう。
そんなメッセージを受け取りました。