『大河ドラマをつくるとうこと』
大石学・時代考証学会 編
2012年 名著出版
大河ドラマの制作を通して、時代考証をどう考えるかを解き明かして行く本。
「なるほどなあ・・」としみじみ納得する内容でした。
時代考証というものをどうやって行い、そしてどこまで厳密に行うのか。
いくつかピックアップしてみます。
○あることがらをリアルにとらえようとする場合、事実を追いかけることでは達成されない。
むしろ、様々な取捨選択の技術や、ある種の嘘を加えることにより、リカル化は達せされることになる。
○『龍馬伝』ではいわゆる時代劇をやるつもりはありません。幕末という現代を描くドラマを目指したい。
当時の人々のいでたちや所作のリアルには徹底的にこだわりながら、「すぐ隣りにいる」ような臨場感あふれる人物像を作り上げていく。
○時代考証作業は、次のような過程になる。
原作→脚本→「時代考証担当による台本チェック」→演出→小道具・・・
○脚本家から原稿が届くと、一話ずつ、一言一句を交渉の先生方とチェックして行きます。
○最初の企画立ち上げから、放送終了まで。大河ドラマ一作品あたり、考証は、およそ三年半に及ぶ。
○時代劇、現代劇を問わず、事実を元にした番組を作るときには、まずは自分で年表をつくる。
主な登場人物が生まれてから亡くなるまで、その行動を日付単位で書き込む。
○史実との違いが分かっていながら制作したフィクションの場面もあるので、その際は理由を公式サイトなどで周知する必要があるだろう。
『篤姫』の場合は、史実と違う部分が大きな反響を呼び、資料を発掘してその検証が行われた。
それは大変望ましいことであり、時代考証はその契機の一つとなることができる。
大河ドラマは、厳密な歴史の再現ではなく、あくまで「ドラマ」であること。
そして、リアルさというものは、事実だけで成り立つのではないこと。
自分の作品にも反映させたい考えです。