小説家になって億を稼ごう

08ビジネス用途

『小説家になって億を稼ごう』
松岡圭祐 著
2021年 新潮新書

タイトルの通り、小説についての内容ですが、映画のシナリオを書いたり映画制作を行う場合にも十分参考になると考えて取り上げました。
しかしこの本・・笑っちゃうくらい面白い。
読んでもらえる小説の書き方を、これでもかと細かくステップごとに解説しています。

「40字×三行で物語を表現する」
一つの行は40字以内、どれも5W1Hで書く。
一行目と二行目で状況が大きく変化しているか。
各行とも明確に変化しているならそれらが物語の三幕構成。
三行は三幕の見出しになっていて、続いて行間を開ける。
一行目と二行目の間は十行、二行目と・・

これはかなり抜粋してますが、こんな風に精密な小説の書き方が続きます。

自分の”感性”で書きたいと思ってる人は、かなり反感を持つのではないでしょうか。
僕はこのやり方を講評する資格も権利もありませんが、
数々のヒット作を生み出してる著者だからこそ、説得力があります。

・あらすじだけの状態で持ち込みしてはいけない。
編集者の希望に沿うように書き換え続け、書きたいものから離れていく。

・地の文はまず情景を伝え、次に人物を描写し、それから会話など人物の動きに移ります。なるべく順を追ってわかりやすく説明する方が、初心者にとって失敗がありません。(コメント:これは映画の撮り方も同じ!!)

・他の作家とは比較せず、ライバルは常に自分だと思ってください。

・プロ小説家としてデビューをめざす方法は主に三つ。「編集者への売り込み」「新人賞への応募」「小説投稿サイトの利用」。

・指摘された内容をそのまま作品に反映させてはいけません。人の感想は、「面白い」か「つまらない」かだけです。

・最終章から遡って読むことで、物語に気を取られず文章表現の直しに集中できます。

・帯のキャッチコピーと、カバーに載るあらすじも、編集者にまかせましょう。

・作家協会のパーティーの席では、作家同士は「○○先生」とは呼び合いません。「○○さん」と呼びましょう。

・(映画化されても)映像版は、他者の著作物です。

細かい執筆方法だけでなく、書いた後の「リリース方法」「出版契約書」、また、「デビューした後」のことまで詳細に経験談とアドバイスが語られます。「二作目にはいつ着手すべきか」なんてアドバイスしてくれる人も少ないでしょう。
デビュー後も、売れた場合と売れなかった場合、編集者との付き合い方など、誰が読んでも興味深く読めるでしょう。
さらに、「映画化のこと」「ベストセラー作家になってから気をつけること」「テレビ出演のオファー」など、この内容を書ける著者は限られると思います。

映画化された場合についても、製作委員会方式や契約書、撮影計画との付き合い方など、著者はここまで把握しているのかと脱帽です。

僕は著者の読者像から離れているためか、僕自身は実は、著者の著作に一度も触れたことはありません・・。ただ小説は好きでよく読むため、書店の本棚から著者が長い間売れっ子だというのは分かってます。

内容的には「ベストセラー小説の書き方完全マニュアル」的な内容ですが、そういうタイトルだと他にもいっぱいありそう。だからか、目立つタイトルにしている。このあたりも、上手いと思います。

小説家を目指す人のための本ですが、創作術の本とみるなら映画作りにも参考になる点は多いなと思いました。

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