『俳優の演技術』
冨樫 森 著
2017年 フィルムアート社
“脚本の読み方”にフォーカスした俳優のための演技論です。
僕は、演出側の人間として読みました。
気になった箇所をピックアップしてみます。
- 映画を語る方法は基本的にこれだけ↓
1)このように生きてきた人が
2)このような出来事を経て
3)このような人になった - 役者が、監督の思いとは違う捉え方をしていると、うまく進まない。
一方で監督の想像を超えた捉え方で驚かされることもある。 - 脚本を読んだ最初の印象は、最後まで拭えない。
- 脚本には内的葛藤は書かれていない。それを読み取るのが俳優の大事な仕事。
- 主人公は何をどのように感じながら生きている人なのか?何を思う人なのか?一言でつぶやいてみる。
- 役の人物の目的や願望をはっきりさせる。
- 自分の役が出ている部分だけを通して読むと、演出上の核心がつかめる。
- 演出は演技指導とは違う。
- 役の人物が経験した感情を体験する。実際にその場所に行ったら、取材したり。それができないなら、限界まで想像する。想像力を駆使して、その感情をリアルに、さも本当の出来事であるかのように体験する。
- 自主映画の若い監督たちは、事前に考えてきた絵コンテに想定された人物の演技と、実際に役者に動いてもらったものが違いすぎてパニックになる。
- 自分を主役で一本、自分で映画を作ってみる。そこで学べるものは大きい。
- セリフは抑揚をつけて覚えてはいけない。抑揚をつけると、感情が先に決まってしまうから。
- 表面的な声の出し方、は演技ではない。
「感情のレベル、トーンの定め方、空気の変わる転換点をつかむ、感情の折れ線グラフを書く、相手のセリフのニュアンスを読み取る、省略されている重要なト書きを考える」など、脚本を読むためのさまざまな手法を大量に取り上げています。
取り上げられている作品が1950年代の作品が多く、やや時代を感じるのは仕方ないですが、この時代の作品が魅力の宝庫だからとのこと。
監督によって演出方法が違うのは、役者に対してどう接するかが違う、とも言えるんだなと思いました。
役者を目指す人だけでなく、役者との向き合い方を学びたい監督さんにも役に立つ一冊だと思います。
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