唐突ながら ウディ・アレン自伝

03監督・役者

『唐突ながら ウディ・アレン自伝』
ウディ・アレン 著
金原 瑞人 /中西 史子 訳
2022年 河出書房新社

特別なファンではありませんが、「監督兼主演」をする監督として気になって読んでみました。
読んで驚いたことは2つあります。

こんなに天才肌だったのか、ということと、
こんなにもモテたのか、ということ(笑)

ページの多くは、生い立ちや交友関係、ゴシップで占められています。
その中で、僕が知りたかった「監督業」について面白いと感じた部分を一部ピックアップしてみます。

・(監督デビュー作で)ぼくは映画を作ったこともなければ、カメラもレンズも照明も監督の仕方もまったく知らないまま、撮影現場に入った。
演技指導も受けたこともない。
「不安じゃないか?」と彼はたずねた。
なぜ不安になるんだろう?ぼくからすれば、何もかもわかりきったことに思えた。
脚本を書いたのはぼくだし、自分がみたいものも分かっている。

・スタンドインにぼくの役をしてもらって、カメラマンが照明を設置したら、撮影準備の完了だ。
スタンドインにはビールでも飲みにいってもらい、ぼくは彼のいた位置につく。自分で描いたシーンを演じ、ぼくが求める口調で台詞をしゃべる。
満足できなければ、もう一度やってみる。

・スピード感こそ、コメディ映画監督の一番の味方だ。

・非常に優れた才能を持つ編集者が参加したおかげで、失敗作は成功策に生まれ変わった。
ゆったりした音楽のシーンを、軽快なジャズに差し替えただけなのに映画は変わった。

・集められた何百というレビューは、どれも内容はバラバラで、互いに矛盾しあうことが多かった。
なぜこんなものが必要なんだ。ぼくは天才なのか、無能なばかなのか、どっちなんだ?

若い映画制作者にアドバイスを求められたら、ぼくの答えは決まっている。
身を木っ端微塵にして働け。よそみをせず、ひたすら働き、仕事を楽しめ。
外の意見を気にしてはだめだ。

・キャスティングという儀式は好きじゃない。
役者が緊張した面持ちで役を求めて入ってくる。
かわいそうに、ためつすがめつ観察されたうえ、演技をさせられたりするわけだ。
僕が選ばなくちゃいけない。だけど何を判断基準にすべきなんだろう?
・・・生まれはどこか、とかどうでもいい質問をするはめになる。

・ぼくは「ヒットかコケるか」にとらわれないようにしている。
ぼくが頑張るのはヒット作を生み出すためじゃない。
自分に作れるベストフィルムを生み出すためだ。
失敗を恐れたり、失敗したときに耐えられなかったりするような人は(芸術家として冒険するなら、間違いなくたまに失敗する)、別の道を探して生計を立てた方がいいと思う。

・ぼくは絶対にテスト上映をしないんだ。
観客の意見を自分の映画に反映する気はないからね。

・ぼくの好みは次の手順だ。
まず、撮影が終わるまで編集をしない。撮影後、編集者とともにAVIDの前に座り、最初のシーンから順に映画全体を編集していく。

ウッディ・アレン作品が好きな人は、裏話も多く、さらに楽しめる本だと思います。

タイトルとURLをコピーしました