スクリーンが待っている

03監督・役者

『スクリーンが待っている』
西川美和 著
2021年 小学館

映画『すばらしき世界』(主演:役所広司)が作られていく過程を、監督の目線で追っていったエッセイ本。
ロケ地の交渉に苦労し、スタッフ他の人付き合いに悩む。集めたスタッフの前で挨拶し、この船は浮かぶのか、沈むのかと考える。
生々しい記述が満載で、映画監督のリアルが伝わってきます。

気になった箇所を抜粋してみます。

・もう1秒たりとも切れない!と信じていた編集が、3ヶ月クールダウンさせてみれば、ここにも贅肉、あそこにも贅肉、と。
・出版で言えば、校閲さんが原稿の中身を事実確認のチェックを入れるように、映画では助監督が脚本に書かれたことの裏をとる。
・劇場公開映画をホンペンと呼ぶ。懐かしい。うちらスタッフも、自分たちの作品をホンペン、と呼んだ。公開されることを夢見て。
・東京は、撮影のしづらい都市です。
・「前にロケ地を提供したら、丸々組の現場が無茶やって潰した。二度と貸さない」という話もキリがない。
・「役者の歯を少し黄ばませる」とか、「街路樹の葉っぱを新緑に変色」させるとか、後工程でできることが増え、「あとでどうにかできるだろう」とみんなが思うようになった。私は演出家としての腕をあげているだろうか。

長年連れ添ったスタッフを切らなければいけなくなった時の話は、読んでてヒリヒリしました。
「カメラの使い方」みたいなのとはまた一線を画す、映画監督に興味ある人に刺さるだろう本です。

面識はないけれど、西川監督とは年齢もほぼ同じで同郷出身。勝手に親近感を持っています。

Bitly
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