『ストーリーテリングで観客の心をつかむ
映像演出101』
キム・ソンヨン 著
2024年 翔泳社
ピクサースタジオでアーティストをやる著者が、
映像を演出するための考え方、コツを101種類にまとめた本です。
「長編映画なのか、スマホで見るショート動画なのかによって画面サイズが変わり、それに合わせてコンテンツを考える」
こんなのは、とても今風な考え方ですね。
「映像制作では、同じシーンを何十回も見ることになり、客観的な視点を失うことも多い。脳をリセットするためのルーチーンが必要」というアドバイスもとても現実的。
他にも気になった点をいくつかピックアップしてみます。
・場面転換は、長編映画はスムーズなものがよく、ショート動画はわざと途切れる様なジャンプカットがいい。
・ピクサーでは声優が同じセリフを何度も繰り返し録音し、いろんなバージョンの録音ファイルを作成。
その中から作品のリズムに最も合う長さで録音された単語だけを抽出し、一つの文章に再編成することも。
・編集理論を身につけよう。どんなにかっこよく撮ったショットも、カットのつながりが不自然だと使えないショットになってしまう。
・次のショットでも被写体が画面の同じ位置に来るように合わせることを「アイフィックス」と呼ぶ。
・VR、ARコンテンツでは、ストーリーテリングの効率性は大きく低下する。
・ピクサーアニメでは、登場人物の顔に象徴的な形をデザインとして反映させている。頑固なキャラに四角い顔、柔軟なキャラに曲線の多い体。
・シーンに合う色の組み合わせを探していく。これがカラースクリプト。
小道具や照明、服装や建物の色合いなど。
・オーバー・ザ・ショルダー(肩なめ)ショットでは、手前の人物の残りの部分が想像できる様に切り取る。
・誤ったフィードバックはノイズになる。
・顔にカメラが寄っていくときは、眉間の下、目と目の間に向けるといい。
・自分でシナリオを書かなくても、練習用に、公開されている映画シナリオを検索して見つけられる。
「一編は自分の作品を作るべき」と著者は言います。
ストーリーを考えるところから公開まで一通り自分でやる。
この全てのプロセスを完全に経験した人とそうでない人とでは、作品に対する姿勢が根本的に違ってくると。
仕事をする上で、選択すべき部分と集中すべき部分を判断する柔軟さが身につくから。
アニメ業界の本だからか、いくつか慣れない言葉もありました。
しかしピクサーは3DCGということもあり、「レンズ」「照明」についてここまで考えるんですね。