『映画演出・個人的研究課題』
石井裕也 著
2020年 朝日新聞出版
映画監督・石井裕也の寄稿を中心にまとめたエッセイ集です。
現代の比較的若手の映画監督がどのような日々を送ってるのかに興味を持って読んでみました。
実は彼のデビュー作は2回も見ていたし、出身地が今僕が住んでるエリアだったりと、いろいろ発見もありました。
最近の撮影のこと、初めて映画を撮った時のこと。幼少期のこと。最近の身の回りのこと。海外の映画祭でのこと。脚本の書く苦悩。
そして、海外で映画を作るということ。
15分の短編映画を3日で撮った。こんなちょっとした表現が参考になる。
監督の文章は面白く、それは考え方や物の見方に寄るものだと思います。
そして、いろいろ世の中のことについて自分で考えてる。
気になるニュースに対して「これはあとでいろいろ考える必要がある」とメモして撮影に向かう。
映画監督に必要なのはこれだなと思ったのです。
自分なりに深く考えてみること。
気になった箇所をいくつかピックアップします。
・商業映画の監督として仕事が来た時、その作品のテーマについて誰よりも詳しくなるくらい調べて考えるはず。それを繰り返すのが映画監督なのだ。
・「もっとわかりやすくしてください」と言われる。最近の世の中では、意味がわからないと即座に「駄作」だと勘違いされてしまうから。
人々はわからないことを極端に恐れて、考えるクセが少なくなっているのは間違いない。
・脚本とは、撮影現場で多くの人間が共有する設計図のようなもので、それそのものが完成形ではない。脚本の答えは映画が完成した時にしか分からない。
・商業映画としてデビュー作で、それまで自主映画時代のスタイルがプロのやり方とまるで違っていて、心身ともにボロボロになった。
毎回毎回テーマに悩み、様々な人たちと関係を作り上げ、予期せぬトラブルに振り回されていきます。
著者は言います。
「映画作りにおいて重要なのはやはり言葉ではなく、映画を面白がれる心の豊かさと、どんな逆境においても常にベストを尽くそうとする姿勢なのだ」