絵コンテで大切なこと

04演技・演出

『絵コンテで大切なこと』
名取孝浩 著
2026年 SBクリエイティブ

アニメ制作における絵コンテの描き方や考え方を、豊富な実例とともに解説した本です。
単に絵コンテの描き方やカメラワークの種類を紹介するのではなく、「なぜその構図にするのか」「なぜカメラを動かすのか」といった、演出の意図にまで踏み込んでいます。

アニメ制作を前提とした内容ですが、実写映像の制作にも通じる部分をピックアップしてみました。

・文章と映像では文法が異なる。シナリオを絵コンテにする際は、ストーリーを維持しながら、映像の法則に従って構成し直す必要がある。
・誰が物語を動かしているのかを見極め、誰の視点で描くかを考える。
・セリフには「感情セリフ」と「説明セリフ」の2種類がある。
・カメラが動いている間、視聴者は何かを探し続け、止まった瞬間にその意味を認識する。
見せたいものがあるなら、最後にしっかり「止めの間」を作ること。
・カメラワークには作品によって向き不向きがある。
・見せ場があっさりしすぎていないか注意する。
・会話は、単なる段取り芝居よりもアクションに絡めた方が、スピード感とテンポが生まれる。
・視聴者の視線の流れを意識する。視線の先に目的物が現れると心地良く、逆にすれば驚きや動的な印象を生み出せる。
・わかりやすいカットは、シルエットにしても状況が伝わる。

本書では、実写との共通点だけでなく、アニメならではの考え方がいくつも登場して、非常に興味深かったです。

・声優はキャラクターの表情を見て演技するため、ラフな絵コンテでも表情はしっかり描く必要がある。
・ロングショットなどで表情が小さくなる場合は、コマの外に表情を大きく描き添える。
・キャラクターの口の開き具合は、声優が声量を判断する手がかりになる。

アニメ用なので、実写で実現しようとすれば、クレーンやドローンなど、さまざまな機材を駆使しなければならないようなカメラワークも登場します。
光源まで絵コンテに描き込むという考え方も印象的でした。

面白かったのが「滑り足対策」です。
アニメでは、走っているキャラクターと背景のスケール感が微妙にずれることで、足が地面を滑っているように見えてしまうことがあるそうです。
そこで、足首や地面との接点をフレームの外に出してしまうという工夫が紹介されていました。

実写の絵コンテでも、撮影現場で実現できるかどうかを考えて描く必要がありますが、アニメでも同じ。
制作現場に過剰な負担をかけない、現実的なプランニングが求められるわけです。
現場の過剰な負担を「作画のカロリー」と表現してるのが面白い。

なお、本書は360ページを超える大作です。
T.U.やT.B.、Q.T.B.など、アルファベットの略号もたくさん登場します。もちろん前半で説明されているのですが、読み進めるうちに「あれ、これ何だったっけ?」となることも。時々、前のページに戻って確認する必要があるかもしれません。

本書では参考図書として映像関連の書籍もいくつか紹介されていて、紹介されていた4冊のうち3冊は、僕がすでにこれまで取り上げています!

アニメの絵コンテを学ぶための本でありながら、実写映像を作る僕にとっても、改めて映像演出について考えさせられる一冊でした。

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