Sound Design 映画を響かせる「音」のつくり方

『Sound Design 映画を響かせる「音」のつくり方』
デイヴィッド・ゾンネンシャイン 著/シカ・マッケンジー 翻訳
2015年 フィルムアート社

音楽ではなく、音の本です。効果音とか環境音について。
すごく緻密な本でした。

いくつか面白かった点をピックアップします。

・時として音は映像よりも強い力を持つ。
『ゴッドファーザー』で主人公がレストランで銃を撃つ際、電車が轟音を上げて走り去る。
しかしその電車は一切画面に映らない。

・シナリオを読んで、必要な音をピックアップする。
-人物や物体のアクション
-音がある環境
-登場人物や観客が体験する感情
-場面転換やストーリーの移り変わり

・ビジュアルマップ(ストーリーと音の流れ)、サウンドマップ(具体的な音、心情的な音、音楽、声を区別する)を作る。

・私たちが一度に認識できる音は2つまで。

・音によって空間のサイズを感じ取ることができる。

・脳は音を処理するのに時間がかかる。アクション映画でカットがどんどん速くなっても、それに合わせた音を入れると脳が追いつかない。

また、いろんな表があって興味深いです。

<感情の音表現表>
例)
嬉しさ=速い動き、協和音の多用
慈悲=低い音の繰り返し

<音楽ジャンルと感情>
例)
賛美歌=落ち着き、深い平穏
バロック=正確さ、秩序

撮影が終わった後、編集するときに役立つ本なので、こだわり派の監督さんが一人でじっくり取り組むのに向いてると思います。

撮ってはいけない

『撮ってはいけない』
飯野宝 著/紺野礼央 監修
2017年 自由国民社

スマホで気軽に写真が撮れる時代。
「撮っていい・悪い・法律に触れる」という視点で
様々なケースについて解説しています。

●背後に写り込んだ人物や乗り物、建物は、著作権侵害にも肖像権侵害にもならない。
●公園や路上のオブジェは自由に撮れる。

などは、なるほどな、と思いました。

しかし、映像の撮影となると、気になることはいっぱい出てきます。

公共の場でロケしていて、誰かが市販の音楽を流してたら・・。
以前、撮影場所のすぐ近くでカラオケ大会が開催されてたこともありました。

パソコンのホームページは撮っていいのか、も気になる。
僕は撮影に必要なホームページは自作してしまう派です。

ただ脚本書いて頑張るだけが映画づくりではない。
仮に問題がなくても、相手のことを考えて許可を取る。
それもマナーじゃないかと思います。

トムさんの映像の撮影でたいせつなこと

『トムさんの映像の撮影でたいせつなこと』
トム・シュレプル 著 / 島田英二 訳
2010年 株式会社スノウバグズ

表紙のイラストも柔らかく、とても初心者受けしそうな装丁になっています。
それにつられて読んでみました。

イラストも多く、語り口調もソフト。
とっつきやすい書籍だと思います。

しかし、書かれている内容は、そこそこ本格的だなと感じました。
何も知らない人が「このくらいは理解しないと・・」という考えでトライすると、ちょっと挫折しそうになるかなと。

どうやら本書は、アメリカの大学の教科書にもなってるようです。
そういう意味では、基本的なことがきちんと抑えられている書籍、と考えていいと思います。

「納得しないと動けない」タイプの人に向いている本かなと思いました。

そうじゃない人は、本など読まずにスマホで撮りまくって感覚をつかむ方が早いでしょう。
(その後に、本を読むとさらによし!)

映像編集者のリアル

『映像編集者のリアル』
2018年 玄光社

現役で映画やアニメの編集を担当する、
映像編集者のインタビュー集。

ちょっと珍しい本ですね。

監督と編集者の関係に始まり、
それぞれ何の編集ソフトを使っているのか、
またどうやって今の仕事に就いたかまで、
興味深く読みました。

ちなみに、共通した編集ソフトは、
Avid、Premiere Pro、Final Cut Pro。

最後に登場する、実際の編集ソフトの画面が新鮮でした。
他人の編集した画面を見ることってないですからね。

7人のインタビューからいくつか抜粋してみます。

・監督と編集マンは、気が合うかどうか。
映画はもちろん、音楽や漫画の嗜好が近いのは大きい。

・役者の心情が理解できなくて、なかなか編集方針が定まらないこともある。

・絵コンテ通りにつなげるだけと思われるけど、そのままつなげてもうまくいかないこともある。

・カットを削るだけでなく、足すこともある。間合いを伸ばしたり。

・組む監督によって編集スタイルが全然違う。
編集者に委ねてくれる監督と、委ねてくれない監督がいる。

・原作があっても読まないようにしている。結局、スクリーンに映ってるもので勝負しなきゃいけないから。

・まず自分の好きなようにつないでみて、監督の指示と答え合わせをする。

・気持ちの良い余韻や間は、監督によって個人差がすこくある。組む監督の感覚を探りながら進める。

・ぶっ続けで編集していると、ストーリーが分かってしまっているので、必要なところも削ってしまう。初めて見る人の視点に立たないといけない。

非道に生きる

『非道に生きる』
園子温 著
2012年 朝日出版社

無茶する監督、という印象の園子温。
彼の映画に対するエッセイ集です。

読んで驚きました。
「戦略的に無茶をしてきた」ことにです。

映画を作って世に出たいと考える人は、
少なからず参考になると思いました。
(決して真似をしろ、ということではなく)

いくつか抜粋します。

・たいていの映画は映画しか意識していないように思う。「映画的」と言われる得体の知れないものだけを探る人が多い。

・僕が映画を作るとき「当事者になりきる」ことを大切にしている。僕の考える取材とは、聞いて、話して、体験すること。対話。
報道の取材では、言葉は全て過去形で語られる。現在進行形ではない。
今現在の体験を描くこと。これが、僕が実話を基にドラマを作る理由の1つ。

・フォーマットを真似ることの意味のなさ。
小津っぽさも、黒澤っぽさも、彼らは凄まじい試行錯誤から生まれている。

・マーケティング的な手法は現代人に見透かされている。そうであれば、次に何が飛び出すか分からない興奮を与えるように行動した方がいい。

・自分の作品が認められない、と時代を嘆くのではなく、自分の作品を無視できないくらい量産して時代に認めさせればいい。

・一本の映画制作のために時間をかけすぎると、出演者の選択やストーリーの展開に気を揉む時間ができてしまう。これは弊害。

・自分が自分の最も良き理解者であり、パートナーであればいい。

PIXAR 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話

『PIXAR 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話』

ローレンス・レビー 著/井口耕二 訳
2019年 文響社

何度か取り上げているピクサー本の一つ。

これまでの本が全てクリエイティブな面に
ついて書かれていたのに対し、
本書は経営とお金の話に徹しています。

正直、自主映画を作る人に役立つかというと、
怪しいでしょう。
ただ、次のことが深く腑に落ちたのです。

ものづくりとお金というのは両輪なのだということ。
お金の使い方も、経営の仕方も、
ピクサーはクリエイティブを大事にしたのだ、ということ。

何より、読んでいてこれだけ興奮することもない。
ちょっとイレギュラーですが、
紹介本の一つに選んでみました。

フィルムメイキング・ハンドブック

『フィルムメイキング・ハンドブック』
ウェディングフィルムから学ぶ撮影と編集の手法


酒井洋一 著
2018年 玄光社

映画っぽい映像を撮りたい人のための解説本。
結婚式の動画制作をもとに解説していきますが、
自主映画で映画っぽい雰囲気づくりに凝りたい方にはピッタリだと思います。

一眼レフを中心にしていることもあり、
レンズや設定など専門用語も多いので、
多少の経験者向けの本だと思います。

ただ、カメラや録音照明など機種名や組み合わせの実例も多く、
満足できる内容となっています。

僕も何だか、アート作品を撮りたくなった本でした。



ピクサー流マネジメント術

これは、僕が人生で最も感動した本の一つです。

『ピクサー流マネジメント術
天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたか』

ピクサー社。
誰もが知ってる、アニメーション映画の制作会社。
『トイ・ストーリー』『ファインディング・ニモ』などにん始まり、どれもこれもヒットしている。

このピクサー映画の“作り方”を丁寧に解説しているのが本書。

●ピクサーの制作本数

年に1本の新作を発表する。
その間、短篇映画を作る。

●ピクサーはすべての作品を自前で作り上げている

ピクサーにおいて映画企画を発案するのは、あくまで監督の役割。
監督志望者は、中心となる監督達を前に、自らのアイデアをプレゼンする。
企画、熱意などをプレゼンする。売り込む。
そしてその可能性が認められた企画だけが、次の段階に進む。
・・・(後略)

●表現に応じて、それを実現する技術を開発する

物語が第一優先。
伝えたいビジョンが先にあり、それをかなえるためにテクノロジーが必要とされる。
新技術が先にあってその技術を生かすために物語が作られるのではない。

●学び続けるためのピクサー大学の存在

ピクサー社員のための各種講座が存在する。受講料は無料。
社員として会社で働きながら、新たな技術を習得したり、
自らの技能を他の社員に教授するための場。
(後略)

・・・などなど線を引きたくなる箇所だらけ。

『Mr.インクレディブル』のブラッド・バード監督の言葉も深く深く、心に刺さりました。

ジョン・ラセターが『トイ・ストーリー』を作ったのは、誰かに「オモチャを主人公にした映画を作れ!」と命令されたからじゃない。
オモチャ好きが高じて「オモチャの映画を作りたい!」と主張したから。
『ファインディング・ニモ』のアンドリュー・スタントンは魚好きだし、
『モンスターズ・インク』のピート・ドクターは、押し入れのお化けがどこに消えたのか、気になって仕方なかった。

複眼の映像

『複眼の映像』
橋本忍 著
2006年 文藝春秋

黒澤明と一緒に『羅生門』『生きる』『七人の侍』 などを書き上げたシナリオライター、橋本忍の本。
古臭くて説教くさい本だと勝手に敬遠してきたのだけど、読んでみたら、いやあ、面白かった!!!

昨今の一般的なシナリオの本は、「テクニック」を羅列していることが多い。
しかし本書では、<書く過程>を丁寧に追っていく。
成功例だけでなく、失敗作(興行的)についても同様に触れている。

特に、タイトルにもなっている、共同で脚本を書く(複眼)、という仕事のやり方についての解説が面白い。

もちろん、時代背景や立場によって真似できる・できないもあるでしょう。
しかし、得るものはたくさんあります。

面白いと思った箇所を抜粋します。

・シナリオライターを目指したが、小説家に方向転換して有名になった人はいる。
しかし、小説家からシナリオライターになった例は無い。
これは小説は読み物、シナリオは設計書、という全く性質の異なる別々の生き物であるため。

・一二テーマ、二にストーリー、三に人物設定。
これが、シナリオを書き始める前に必要な事。
これを愚直に積み上げていく。

・シナリオには起承転結がある。起は始まり、承は展開、転は最高潮、結は終わり。
しかし用語が古いので、私たちは、スタート、展開、クライマックス、ラストと呼んだ。
シナリオの構成には、書くことのできぬ四つの段階がある。
これらを4つの箱に分けて「四つ箱、大箱」と呼ぶ。「大箱はどうした」「大箱はどうなってる」などと使った。

・黒澤さんは大学ノートを取り出した。勘兵衛の人物像が書き込んである。背の高さに始まり、草履の履き方、歩き方、他人との応答の仕方、背後から声をかけられた時の振り返り方、ありとあらゆるシチュエーションに対応する立ち居振る舞いが、所々絵を交えて延々と続いている。
私はガーンと棍棒で殴られた感じだった。
シナリオを書く場合、誰でもテーマとかストーリーはそれなりに作るが、面倒臭くて手が抜けるのが人物設定、人物の掘りである。それらをすっ飛ばし、本文の書きに入ってしまう。人物が動き出せば、人間性などは自然に成立するから、二度手間のような気さえする。
でもそれは違う。
人間は恐ろしいほど数多い共通点を持ちながら、一人一人に特質があって違うのだ。だからドラマが成立する。人物を掘り込み、特質を書き込んでこそ、俳優さんの演技にも工夫と努力が生まれる。
シナリオの出来上がりの善し悪しは、面倒でひどくおっくうでつい誰もが手抜きになってしまう、人物の掘りにあると言っても過言では無いのだ。

・黒澤明にはシナリオについての哲学がある。
「仕事は一日も休んではいけない」
彼に言わせれば、シナリオを書く作業はマラソン競走に似ているという。頭を上げてはいけない。目線はやや伏せ目で、前方の一点を見つけ黙々と走る。ただひたすら走り続けていればやがてはゴールに到達する。
黒澤組の1日の仕事量は平均でペラ15枚。朝の10時から午後5時まで7時間。だから三週間籠もれば、実働二十日間で、一本300枚程度の脚本が仕上がる。
休めば逆に体が疲れる。稽古事には一日も体を休ませてはいけないのだ。

・黒澤組の共同脚本とは、同一シーンを複数の人間がそれぞれの眼(複眼)で書き、それらを編集し、混声合唱の質感の脚本を作り上げる。それが黒澤作品の最大の特質なのである。
映画の世界では共同脚本の例は数多い。しかしそれらは誰かの書いたホンに、プロデューサーや監督が修正を希望し、脚本がが応じないため、他のライターを起用して手を入れる、みたいなことが多い。
しかし、黒澤組のように、同一シーンを書き揃え、それらの取捨選択から、隙間や弱みのない、充実した分厚い、新鮮な脚本を作るなど、他に例がない。

****

「共同脚本(複眼)が完璧である」などとは書いていません。
黒澤明という、人を見抜く目を持った強いまとめ役がいてからこそ。
著者ならではの、共同脚本についての分析本である、とも思いました。

日本映画のサウンドデザイン

『日本映画のサウンドデザイン』
紅谷 愃一 著/小島 一彦 監修
2011年 誠文堂新光社

とにかく、現場現場で異なる問題に悩まされる様子が伝わって来ます。
プロの世界にだって、録音にシンプルな答えなどないということが分かる一冊。

カエルの大合唱、セミの大群、海外のまちの騒音・・・。

風が強ければマイクに風防をつけ、録音マンもジャケットを着込む。
塵が舞えばマイクに防塵をつけ、録音マンもゴーグルとマスクをつける。

『羅生門』のアフレコでは、室内収録はおかしいから屋外でやることになったり。

「サウンド・オンリー」とは、本番が終わった後に、録音に不都合があったために、すぐに同じ演技をして音だけを収録すること。これは自主映画でもよくやりますね。

本書から自主映画でも役立つノウハウを取り出すなら、「カメラのフレーム外ギリギリまでマイクを役者に寄せ、可能な限り明瞭な声を同時録音しようと努力する」。この言葉に尽きるんじゃないかと思います。

著者の60年に渡る映画制作の経験をまとめており、
昭和の映画史を記した本にもなっていると思います。